
質量分析は、生命科学、化学、物理学、材料科学、地球科学、環境科学、医学など、多様な研究分野で利用される基盤分析技術です。現在では科学研究に欠かすことのできない分析手法となっていますが、その発展は、新しい研究課題に挑戦する研究者と、それを可能にする新しい分析技術との相互作用によって支えられてきました。
大阪大学では、1930年代後半に日本初の質量分析計を開発して以来、約90年にわたり質量分析装置の開発と応用研究を継続してきました。その歴史を通して一貫して受け継がれてきたのは、「新しい研究には、新しい分析技術が必要である」という考え方です。既存の装置では解決できない課題に直面したとき、自ら新しい分析法や質量分析装置を開発し、それによって新しい研究を切り拓いてきました。
この伝統は、現在の大阪大学大学院理学研究科共通施設質量分析センターにも受け継がれています。
一般に、分析センターは装置の共同利用や分析サービスを主な役割としています。しかし、本センターはそれに加えて、研究支援と最先端質量分析装置の開発を一体的に推進していることを大きな特徴としています。単に装置を利用していただくだけではなく、研究者が抱える課題に対して、どのような質量分析が有効であるかをともに考え、必要に応じて新しい分析技術や装置の開発へと展開する。それが本センターの目指す研究支援です。
質量分析の発展は、装置開発と応用研究の相互作用によって進んできました。研究現場から生まれた課題が新しい分析技術を生み、その技術が再び新しい研究を可能にする。この積み重ねによって、質量分析の対象は原子・分子から生体高分子、材料、環境、地球・宇宙科学へと大きく広がってきました。本センターも、このような発展の一翼を担い、質量分析の新たな可能性を切り拓いていきたいと考えています。
また、本センターでは、学内外の研究者との共同研究や産学連携を積極的に推進するとともに、学生、若手研究者、技術職員の育成にも力を注いでいます。大阪大学が長年培ってきた装置開発と分析技術の蓄積を次世代へ継承し、さらに発展させることも、本センターの重要な使命です。
質量分析の可能性は、今なお広がり続けています。新しい研究課題が生まれるたびに、新しい分析技術が求められます。大阪大学大学院理学研究科共通施設質量分析センターは、約90年にわたり受け継がれてきた質量分析研究の伝統を礎とし、共同利用、研究支援、共同研究、装置開発を一体として推進することで、新しい分析技術によって新しい研究を切り拓く研究拠点であり続けたいと考えています。
今後とも、皆様のご支援とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
2025年4月
大阪大学大学院理学研究科 共通施設
質量分析センター
センター長 豊田 岐聡